作詞・作曲 ユリイ・カノン
仄暗い校舎の塔屋を抜け出せば君が待っていた
錆びたフェンスから望む街
雨傘の咲く六月の事だった
曖昧な雲から零れた陽が作る影は寄り添って
「あの場所へ行こう」そう言って
濡れた頬を拭い 手を引いて歩く
叶えられない約束だ
生きる体温をくれた指が解けて
形のない痛みに変わった
心臓を落としたこの世のどこか
或いはテトラの片隅で
古ぼけた病舎の階段 ペトリコール漂う夕暮れ
「明日なんて来なくていいのに」
遮断桿が降りてふたりを隔てた
空を遮る高架に沿って 過去を辿る足音ひとつ
月を追う子供みたいに 夢中で駆ける君はいないんだ
すべて茜に染まり落ちていく描写で
傘を回して君は笑った
歳月がこの日々を奪うなら
大人になんてなりたくないんだ
いつか終わる命の途中で
未完成な唄に君を綴った
アイリスの咲く季節が巡り
四十八月の雨が降る
望まれない命だった 君に逢うその日までは
今ふたりを繋ぎとめる この花の亡骸を葬る